中小企業卒業枠(卒業枠)とは、通常枠以外の事業再構築補助金ひとつで、事業再構築を通じて資本金または従業員を増やし、中小企業者等から中堅企業・大企業等へ成長させるものです。中小企業卒業枠は、中小企業者等限定の枠で、通常枠に比べて、補助金額が多い反面、目標が達成できなかった場合、返金を求められる点が特徴です。
中小企業卒業枠は通常枠+αの中小企業者等専用の事業再構築補助金
中小企業卒業枠は、文字どおり中小企業者等限定の「卒業枠」であり、中小企業者が通常枠の事業再構築を通じて、中堅企業・大企業へ成長するための事業再構築です。
中小企業卒業枠は、通常枠の事業再構築に加えて、後述の組織再編要件、設備投資要件、グローバル展開要件のいずれかを満たす必要があります(事業再編等要件)。また、通常枠とは異なり、付加価値額要件を満たさない場合は、補助金の返還を求められます。
他方で、これらの厳しい要件をクリアした場合は、通常枠の分に加えて、さらに最大で4,000万円の補助金が追加で給付されます。
中小企業卒業枠の概要
中小企業卒業枠(卒業枠)の概要 | |
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定義 | 中小企業卒業枠とは、事業再構築により、事業計画期間終了までに大企業等(中小企業等以外の企業等をいう。以下同じ。)に成長することを目指す中小企業等を対象とした事業再構築補助金をいう。 |
概要 | 事業再構築を通じて、資本金又は従業員を増やし、3年~5年の事業計画期間内に中小企業者等から中堅・大企業等へ成長する中小企業者等が行う事業再構築を支援。(すべての公募回の合計で、400社限定) |
補助対象事業者 | 中小企業者等限定 |
要件 |
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補助金額 | 6,000 万円超~1億円 |
補助率 | 2/3 |
補助事業実施期間 | 交付決定日~14か月以内(ただし、採択発表日から16か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費、海外旅費 |
補助金返還の制度 |
※この他、不採択、交付取消、財産処分の場合の返還、収益納付等が発生する可能性もあります。 |
備考1 | 中小企業卒業枠は、中小企業者等限定の枠です。 |
備考2 | 中小企業卒業枠で不採択の場合は、通常枠で再審査されます。再審査にあたっては事業者での手続きは不要です。 |
参照:事業再構築指針
参照:事業再構築補助金公募要領
中小企業卒業枠の要件
【要件1】事業再構築要件
事業再構築要件 |
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事業再構築補助金の通常枠(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換(製造業・サービス業)又は事業再編)のいずれかを行うものであること。 |
※ 当然ながら、上記の通常枠の事業再構築に求められる要件を別途満たす必要があります。
参照:事業再構築補助金の概要
【要件2】売上高(等)減少要件
売上高(等)減少要件 |
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2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること等。 (売上高に代えて付加価値額を用いることも可能) |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件3】認定経営革新等支援機関要件
認定経営革新等支援機関要件 |
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事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。 補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)と策定していること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件4】事業再編等要件
事業再編等要件 | |
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本事業の中小企業卒業枠により支援を受けるためには、次の1.から3.までのいずれかにより大企業等に成長することを要するものとする。 | |
1.事業再編の定義 | 中小企業卒業枠における事業再編とは、会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行うことをいう。 |
2.新規設備投資の定義 | 中小企業卒業枠における新規設備投資とは、新たな設備等に対する投資であって、中小企業卒業枠による補助金額の上乗せ分の三分の二以上の金額を要するものをいう。 |
3.グローバル展開の定義 | グローバル展開とは、次の(1)から(4)までのいずれかに該当する事業をいう。 |
(1)海外直接投資 海外直接投資とは、中小企業等が補助金額の二分の一以上を外国における支店その他の営業所又は海外子会社等(当該中小企業等の出資に係る外国法人等であって、その発行済株式の半数以上又は出資価格の総額の二分の一以上を当該中小企業等が所有しているものをいう。)の事業活動に対する費用に充てることで、国内及び海外における事業を一体的に強化することをいう。 (応募申請時に、海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料を提出すること。) |
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(2)海外市場開拓 海外市場開拓とは、中小企業等が海外における需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業の海外売上高比率が二分の一以上となることが見込まれるものをいう。 (応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる資料を提出すること。) |
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(3)インバウンド市場開拓 インバウンド市場開拓とは、中小企業等が国内における外国人観光旅客の需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業に係る製品又は商品若しくはサービスの提供先の二分の一以上が外国人観光旅客の需要に係るものとなることが見込まれるものをいう。 (応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる資料を提出すること。) |
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(4)海外事業者との共同事業 海外事業者との共同事業とは、中小企業等が外国法人等と行う設備投資を伴う共同研究又は共同事業開発であって、その成果物の権利の全部又は一部が当該中小企業等に帰属するものをいう。 応募申請時に、共同研究契約書又は業務提携契約書(日本語訳。検討中の案を含む)を提出すること。 |
参照:事業再構築指針
参照:事業再構築指針の手引き
【要件5】付加価値額要件
付加価値額要件 |
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補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
中小企業卒業枠(卒業枠)の特徴
【特徴1】中小企業者等が中堅企業・大企業に向けて「卒業」する枠
中小企業卒業枠は、中小企業者等限定の枠であり、中小企業を「卒業」して中堅企業・大企業に成長する事業再構築補助金の枠です。
中小企業卒業枠では、通常枠の要件に加えて、単に増資するのではなく、以下のいずれかの方法により、中堅企業・大企業に成長しなければなりません(事業再編等要件)。
3つの事業再編等要件
- 事業再編
- 新規設備投資
- グローバル展開
これら3つの事業再編等要件につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
事業再編等要件とは、事業再構築補助金の要件のひとつで、事業再編、新規設備投資、グローバル展開のいずれかをおこなうことです。事業再編等要件は、中小企業卒業枠においてのみ求められる要件です。
【特徴2】不採択でも通常枠で再審査される
中小企業卒業枠は、事業再構築要件として、通常枠の事業再構築補助金の要件を満たしている必要があります。
この点について、中小企業卒業枠での事業再構築補助金の申請では、仮に中小企業卒業枠として不採択となった場合であっても、通常枠で再審査されます。ただ、当然ながら、その補助金額・補助率は、通常枠の事業再構築補助金の範囲内となります。
なお、再審査の際には、改めて事業者が手続きをする必要はありません。
【特徴3】卒業枠は目標未達で補助金の返還が求められる
中小企業卒業枠の補助金額は、6,000 万円超~1億円であり、通常枠(100万円~8,000万円)に加えて、従業員数に応じて、最小でも2,000万円、最大で6,000万円もの追加分があります。しかしながら、中小企業卒業枠は、通常枠とは異なり、補助金返還の制度があります。
卒業枠については、事業計画期間終了時点において、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく「2.補助対象事業者」に定める中小企業者等の定義から外れ、中堅・大企業等に成長することができなかった場合、通常枠の補助上限額との差額分について補助金を返還する必要があります。
参照:事業再構築補助金公募要領
このように、目標(=中小企業者等でなくなること)が達成できなかった場合は、補助金の返還を求められます。中小企業者等でなくなるためには、増資による資本金等の増加や、常勤従業員の増加が必須となります。
ただ、返還を求められる金額については、補助金額の全額ではなく、あくまで「通常枠の補助上限額との差額分」(最大で6,000万円)に限ってはいます。このため、資金繰りや資金計画に余裕がある場合は、返還のリスクを取ってでも、チャレンジする価値があるといえます。
【特徴4】卒業枠達成後に事業規模を縮小させるとペナルティがある
なお、中小企業卒業枠の目標である中堅企業・大企業への成長を達成した後、正当な理由なく中小企業者等に該当するまで事業規模を縮小させた場合は、ペナルティとして、事業再構築補助金の事業終了後5年間は、中小企業庁の施策(補助金・委託費等)を利用できなくなります。
卒業枠については、一時的に中堅・大企業等へ成長した後、正当な理由なく中小企業者の要件に該当する事業規模の縮小をさせた場合、本補助事業終了から5年間は中小企業庁が行う中小企業者等向けの施策(補助金、委託費等)をご利用いただけません。
参照:事業再構築補助金公募要領
ポイント
- 中小企業卒業枠は、中小企業者等が中堅企業・大企業に成長することを支援するための事業再構築補助金。
- 中小企業卒業枠は、通常枠に加えて一定の要件を満たすことで、最大4,000万円の追加の補助金が給付される。
- 中小企業卒業枠は、中小企業者等限定の枠であり、中堅企業等による申請はできない。
- 中小企業卒業枠では、事業再編等要件として、事業再編、新規設備投資、グローバル展開のいずれかを満たす必要がある。
- 中小企業卒業枠では、目標(中堅企業・大企業への成長)が達成できない場合は、補助金の返還を求められる。
- 中小企業卒業枠では、目標(中堅企業・大企業への成長)が達成できた後に、中堅企業等に該当するまで事業規模を縮小した場合は、ペナルティ(補助金・委託費等の利用不可)がある。