業種転換とは、事業再構築補助金における通常枠の事業再構築のひとつで、業種の転換に該当する新製品・新サービスを開発することにより、新市場に進出するものです。業種の転換が必要となるため、他の通常枠の事業再構築(新分野展開、事業転換、業態転換)に比べて、難易度が高く、通常枠の中では最も難易度が高い点が特徴です。
業種転換は新製品・新サービスの開発による業種の転換
業種転換とは、中小企業等が新たな製品を製造し、または新たな商品もしくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することをいいます。
ここでいう業種の定義は、以下のとおりです。
この他、事業・業態につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
事業再構築補助金における業種は、日本標準産業分類にもとづく大分類の産業であり、事業は、同様に日本標準産業分類にもとづく中分類以下の産業のことです。事業再構築補助金の申請手続きにおいては、事業再構築の種類である新分野展開、業種転換、事業転換等の判断基準となります。
業種転換の概要
業種転換の概要 | |
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定義 | 業種転換とは、中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することをいう。 |
概要 | 新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す中小企業等の新たな挑戦を支援。 |
補助対象事業者 | 中小企業者等・中堅企業等 |
要件 |
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補助金額 | 中小企業者等・中堅企業等共通 【従業員数20人以下】100万円~4,000万円 【従業員数21~50人】100万円~6,000万円 【従業員数51人以上】100万円~8,000万円 |
補助率 | 中小企業者等:2/3(6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等:1/2(4,000万円を超える部分は1/3) |
補助事業実施期間 | 交付決定日~12か月以内(ただし、採択発表日から 14 か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費 |
補助金返還の制度 | 公募要領では、特に補助金返還の制度について記載はありません(売上高構成比要件を達成できなかった場合に補助金を返還する必要はありません)。ただし、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に違反した場合は、返還を求められる可能性があります。 ※この他、不採択、交付取消、財産処分の場合の返還、収益納付等が発生する可能性もあります。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
業種転換の要件
フローチャートで業種転換の要件をかんたん確認
【要件1】製品等(製品・サービス等)の新規性要件
製品等(製品・商品等)の新規性要件 | |
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事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商品若しくはサービスが、新規性を有するものであることとして、次の1.から3.までのすべてを満たすこと。
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1.過去(2020年3月以前)に製造・提供した実績がないこと | 過去に製造・提供していた製品・サービス等を再製造・再提供等することは、事業再構築によって、新たな製品・サービス等を製造・提供しているとはいえません。 過去に製造・提供した実績がないものにチャレンジすることをお示し下さい。 |
2.製造・提供に用いる主要な設備を変更すること | 既存の設備でも製造・提供可能な製品・サービス等を製造・提供することは、事業再構築によって、新たな製品・サービス等を製造・提供しているとはいえません。 主要な設備を変更することが新たな製品・サービス等を製造・提供するのに必要であることをお示し下さい。 |
3.定量的に性能又は効能が異なること(製品・サービス等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。) | 性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製品・サービス等であることをお示し下さい。 (例:既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等) |
製品等(製品・商品等)の新規性要件非該当例 | |
「過去に製造・提供した実績がないこと」を満たさない場合 | 過去に製造していた製品又は過去に提供していた商品若しくはサービスを再製造又は再提供する場合。 (例)過去に一度製造していた自動車部品と同じ部品を再び製造する場合。 |
「製造・提供に用いる主要な設備を変更すること」を満たさない場合 | 既存の製品の製造又は既存の商品若しくはサービスの提供に必要な主な設備、装置、プログラム(データを含む。)又は施設(以下「設備等」という。)が、新たな製品の製造又は新たな商品若しくはサービスの提供に必要な主な設備等と変わらない場合。 (※)新たな投資を必要とせず、単に商品ラインナップを増やすような場合は要件を満たしません。 (例)これまでパウンドケーキの製造の際に用いていたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合。 |
「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさない場合 (製品・サービス等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。) |
製品又は商品若しくはサービスの性能が定量的に計測できる場合であって、既存の製品又は既存の商品若しくはサービスと新製品又は新商品若しくは新サービスとの間でその性能が有意に異なるとは認められない場合。 (例)従来から製造していた半導体と性能に差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合。 |
その他の場合 | 既存の製品の製造量又は既存の商品若しくはサービスの提供量を増大させる場合。 (例)自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合。 |
事業者の事業実態に照らして容易に製造又は提供が可能な新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合。 (例)自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合。 |
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既存の製品又は既存の商品若しくはサービスに容易な改変を加えた新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合。 (例)自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。 |
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既存の製品又は既存の商品若しくはサービスを単に組み合わせて新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合。 (例)自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合。 |
参照:事業再構築指針
参照:事業再構築指針の手引き
【要件2】市場の新規性要件
市場の新規性要件 | |
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事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商品若しくはサービスの属する市場が、新規性を有するものであること(2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業について、「新規性」を有するものとみなします)。 | |
既存製品・既存サービス等と新製品・新サービス等の代替性が低いこと | 市場の新規性要件を満たすためには、新製品・新サービス等を販売した際に、既存製品・既存サービス等の需要が単純に置き換わるのではなく、売上が販売前と比べて大きく減少しないことや、むしろ相乗効果により増大することを事業計画においてお示しください。
(例)日本料理店が、新たにオンラインの料理教室を始める場合、オンライン料理教室を始めたことにより、日本料理店の売上は変わらない(むしろ宣伝による相乗効果により上がる)と考えられることから、市場の新規性要件を満たすと考えられる。 |
市場の新規性要件の非該当例 | |
「既存製品・既存サービス等と新製品・新サービス等の代替性が低いこと」を満たさない場合 | 既存の製品又は既存の商品若しくはサービスとは別の製品又は別の商品若しくはサービスだが、対象とする市場が同一である場合。 (具体的には、既存の製品又は既存の商品若しくはサービスの需要が、新製品又は新商品若しくは新サービスの需要で代替される場合) (例)アイスクリームを提供していた事業者が、新たにかき氷を販売するが、単純に従来の顧客がアイスクリームの代わりにかき氷を購入することを想定する事業計画を策定した場合、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。 |
既存の製品又は既存の商品若しくはサービスの市場の一部のみを対象とするものである場合。 (例)アイスクリームを提供している事業者が、バニラアイスクリームに特化して提供するが、単純に従来の顧客が新たに提供するバニラアイスクリームを購入することを想定する事業計画を策定した場合、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。 |
参照:事業再構築指針
参照:事業再構築指針の手引き
【要件3】売上高構成比要件
3.売上高構成比要件 | |
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事業計画期間終了後、新たに製造する製品又は新たに提供する商品若しくはサービスを含む業種が、売上高構成比の最も高い業種となることが見込まれるものであること。※売上高10%要件は不要 |
参照:事業再構築指針
参照:事業再構築指針の手引き
【要件4】売上高(等)減少要件
売上高(等)減少要件 |
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2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること等。 (売上高に代えて付加価値額を用いることも可能) |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件5】認定経営革新等支援機関要件
認定経営革新等支援機関要件 |
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事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。 補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)と策定していること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件6】付加価値額要件
付加価値額要件 |
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補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
業種転換の非該当例
すでに述べた非該当例以外にも、例えば、以下のいずれかに該当する場合、業種転換に該当しません。
業種転換の非該当例
- 既存の業種に必要な主な設備等が、新たな業種に必要な主な設備等と変わらない場合
- 事業の前後で売上高構成比の最も高い事業が日本標準産業分類に基づく大分類の単位で変更されない場合
参照:事業再構築指針
業種転換の特徴
【特徴1】業種転換は新規製品・新規サービスで業種を転換すること
業種転換は、いわゆる新規製品や新規サービスを開発することにより、業種を転換して新市場で売上を増やす事業再構築です。
つまり、業種転換の事業再構築では、新規製品・新規サービスを開発し、大分類である「業種」そのものを転換し、新市場で売上を増やす事業計画とするとする必要があります。いわゆる「新規事業の立ち上げ」のうち、比較的大規模なものが該当するといえるでしょう。
業種転換では、大枠としての業種そのものを変えることになります。このため、業種そのものは転換しない「事業転換」に比べると、難易度が高い事業再構築といえます。
【特徴2】新規製品・新規サービスを主要事業に育てる必要がある
業種転換では、新規製品・新規サービスの事業の売上が、売上高構成比の最も高い事業となる見込みが要件のひとつとなっています(売上構成比要件)。つまり、業種転換による事業再構築を目指す場合、新規製品・新規サービスを将来の主な事業とすることを目指す必要があります。ただし、必ずしもその売上高が総売上高の10%以上(売上高10%要件)となる必要はありません。
その意味では、それぞれの事業の売上構成が10%前後となっているような、多角化経営で多数の事業(おおむね10以上の事業)をおこなう事業者にとっては、申請しやすい事業再構築といえます。
逆に、売上構成・事業の数が少ない=事業を絞っている事業者の場合は、新規製品・新規サービスの売上高が総売上高の10%を満たせば足りる、新分野展開・業態転換(製造業)・業態転換(サービス業)のほうが申請しやすい事業再構築といえます。
【特徴3】業種転換は難易度が最も高く規模が大きい中小企業者等・中堅企業等向け
このように、業種転換は、規模が大きい事業再構築が求められます。その意味で、新分野展開や業態転換に比べると難易度は高めですし、事業だけを転換する事業転換よりも難易度は高いです。つまり、業種転換は、4つの事業再構築のなかで最も難易度が高いといえます。
よって、業種転換は、中小企業者等のなかでも規模が大きい事業者や、中堅事業者が検討するべき事業再構築といえます。
ポイント
- 業種転換は、大分類である「業種」そのものを転換すること。
- 業種転換は、大分類である「業種」はそのままで、中分類以下の「事業」を転換する「事業転換」に比べると、難易度が高い事業再構築。
- 業種転換は、新規製品・新規サービスを将来の主な事業とすることを目指す必要がある。
- 業種転換は、事業の数が多い(おおむね10以上)事業者にとっては申請しやすい事業再構築。
- 事業の数が少ない事業者にとっては、新分野展開・業態転換のほうが申請しやすい。
- 業種転換は、4つの事業再構築のなかで、最も難易度が高い。
- 業種転換は、規模が大きい中堅事業者・中堅企業が検討するべき。