製造方法・提供方法の新規性要件とは、事業再構築補助金の要件のひとつで、事業を行う中小企業等にとって、事業による新たな製品・サービス等の製造方法・提供方法が、新規性を有するものであることです。製造方法・提供方法の新規性要件は、業態転換の事業再構築において求められる要件です。

製造方法・提供方法の新規性要件とは

製造方法・提供方法の新規性要件の定義

製造方法・提供方法の新規性要件とは、既存製品の製造方法、既存サービスの提供方法等を変更することです。具体的には、次のすべての要件を満たす必要があります。

【意味・定義】製造方法・提供方法の新規性要件とは

事業を行う中小企業等にとって、事業による新たな製品の製造方法又は新たな商品若しくはサービスの提供方法が、新規性を有するものであることとして、次の1.から3.までのすべてを満たすこと。

  • 過去(2020年3月以前)に同じ方法で製造し、または提供ていた実績がないこと
  • 新たな製造方法または提供方法に用いる主要な設備を変更すること
  • 定量的に性能又は効能が異なること
    (製造方法・提供方法の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)

製造方法・提供方法の新規性要件は、業態転換(製造業サービス業)の事業再構築においてのみ求められる要件です。

新規性は発明の要件である「新規性」とは別物

なお、ここでいう新規性とは、発明の要件である新規性とは異なり、事業再構築に取り組む事業者にとっての新規性のことです。

【注】「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。

2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業は「新規性」ありとみなされる

また、2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業について、「新規性」を有するものとみなされます。

2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業について、「新規性」を有するものとみなします。

製造方法・提供方法の新規性要件の3要件とは

【要件1】過去(2020年3月以前)に同じ方法で製造していた実績がないこと

過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと
過去に製造等していた方法と同じ方法で製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな方法で製品等を製造等しているとはいえません。過去に実績がない方法で製品等を製造等することにチャレンジすることをお示し下さい。

要件の1つめは、過去に同じ方法で製造していた実績がないこと、つまり、まったくの新規の製造方法・提供方法であることです。(ただし、ここでいう「過去」がどの程度かの判断に迷う場合は5年程度を一つの目安とすることができます)

出典
製品等の新規性要件の申請に当たってお示しいただく事項として記載のある「①過去に製造等した実績がないこと」や「②製造等に用いる主要な設備を変更すること」、製品等の新規性要件を満たさない場合の例として記載のある、「既存の製品等に容易な改変を加えた新製品等を製造等する場合」や「単純に組み合わせただけの新製品等を製造等する場合」等について、明確な基準はあるのか。
一律に基準を設けることとはしておりません。なお、「①過去に製造等した実績がないこと」については、判断に迷う場合は5年程度を一つの目安としてください。また、例えば、試作のみでこれまでに販売や売上実績がないケース、テストマーケティングなど実証的に行ったことはあるものの継続的な売上には至っていないケースであって、更なる追加の改善等を通じて事業再構築を図る場合や、従来販売していた製品の改善を通じて事業再構築を図る場合は「過去に製造等した実績がない場合」に含まれます。

上記の内容は、製品・サービス等の新規性要件についてのものですが、弊所にて事務局に確認したところ(2021年6月17日12:00現在)、この「5年程度」の考え方は、製造方法・提供方法の新規性要件にも当てはまるとのことです。

事業計画では、この「過去に実績がない方法で製品等を製造等することにチャレンジすること」を提示する必要があります。

ただ、「実績がない」ことを証明することはできませんので、これまでの既存の製品・サービス等の製造方法・提供方法を提示することにより、間接的に「実績がない」ことを提示する等の方法が考えられます。

【要件2】新たな製造方法に用いる主要な設備を変更すること

新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること
既存の設備でも製造等可能な方法で、製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな方法で製品等を製造等しているとはいえません。主要な設備を変更することが新たな方法で製品等を製造等するのに必要であることをお示し下さい。

要件の2つめは、主要な設備を変更すること、つまり新規の設備投資が伴うことです。

事業計画では、主要な設備を変更すること=設備投資を実施することと、その設備投資が製品・サービスの製造・提供に必要なものであることを提示する必要があります。

なお、事業再構築補助金では、通常枠・通常枠以外の枠のいずれの枠による事業再構築であっても、必ず設備投資が求められます。このため、設備投資が伴わない事業計画を検討されている場合は、設備投資名が必要な事業計画に改めることを検討してください。

【要件3】定量的に性能又は効能が異なること

定量的に性能又は効能が異なること(製造方法等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製造方法等が有効であることをお示し下さい。

要件の3つめは、新規の製造方法・提供方法が、既存の製造方法・提供方法と定量的に性能又は効能が異なることです。

事業計画では、新規の製造方法・提供方法が既存の製造方法・提供方法と性能・効能が定量的に違うことを提示する必要がありまあす。

ただし、これは新規の製造方法・提供方法の性能や効能が定量的に計測できる場合に限ります。しかしながら、製造方法・提供方法の性能や効能が定量的に計測できない場合は、事業計画において、「定量的に性能又は効能を比較することが難しいこと」を提示する必要があります。

製造方法・提供方法の新規性要件の非該当例

「過去に製造した実績・提供した実績がないこと」を満たさない場合 過去に製造していた製品を再製造し、または提供していたサービス等を再提供する場合。
(例)過去に一度製造していた自動車部品と同じ部品を再び製造する場合。
「製造・提供に用いる主要な設備を変更すること」を満たさない場合 既存の製品の製造またはサービス等の提供に必要な主な設備、装置、プログラム(データを含む。)又は施設(以下「設備等」という。)が、新たな製品の製造または新たなサービスの提供に必要な主な設備等と変わらない場合。
(※)新たな投資を必要とせず、単に商品ラインナップを増やすような場合は要件を満たしません。
(例)これまでパウンドケーキの製造の際に用いていたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合。
「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさない場合
(製品の製造方法・サービス等の提供方法の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
製品の製造方法・サービス等の提供方法のj性能が定量的に計測できる場合であって、既存の製品・既存サービス等と新製品・新サービス等の製造方法・提供方法との間でその性能が有意に異なるとは認められない場合。
(例)従来から製造していた半導体と性能に差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合。
その他の場合 既存製品の製造量・既存サービスの提供方法を増大させる場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合。
(例)衣料品販売店を3店舗経営する企業が、新たに同様の販売店をもう1店舗開店する場合
事業者の事業実態に照らして容易に製造・提供が可能な新製品・新サービスを製造し、または提供する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合。
(例)衣料品販売店を経営する企業が、工夫することなく単に無料宅配サービスを導入する場合。
既存製品・既存サービスに容易な改変を加えた新製品を製造し、または提供する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。
(例)衣料品販売店を経営する企業が、既に行っているネット販売事業で既存のポイント制度を導入する場合。
既存製品・既存サービスを単に組み合わせて新製品を製造し、または提供する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合。
(例)衣料品販売店を経営する企業が、既に別々に行っているネット販売事業と店舗において行っていたサブスク事業を組み合わせ、ネット・サブスク事業とする場合。