事業再構築補助金における補助対象経費とは、事業再構築補助金の補助対象となる経費のことです。事業再構築補助金では、あらゆる経費が補助対象となるのではなく、補助対象となる経費は限定されています。このため、事業計画の策定の際には、事業において支出される経費が、この補助対象経費に該当するかどうかが重要となります。
補助対象経費とは
補助対象経費一覧
事業再構築補助金における補助対象経費は、次のいずれかに該当するものです。
補助対象経費一覧 | |
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建物費 |
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機械装置・システム構築費 |
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技術導入費 | 本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
外注費 | 本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
広告宣伝・販売促進費 | 本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費 |
研修費 | 本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費 |
海外旅費 (卒業枠、グローバルV字回復枠のみ) |
海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費 |
参照:事業再構築補助金公募要領
「事業拡大につながる事業資産」が重要
事業拡大につながる有形・無形の事業資産に投資する
事業再構築補助金は、中小企業等が将来にわたって持続的に競争力強化を図る取組を支援することを目的としています。
この目的に適合した補助対象経費と認められるためには、「事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応の規模の投資を含む」ものである必要があります。このため、一過性の支出と認められるような支出が補助対象経費の大半を占めるような場合、事業再構築補助金の支援対象にはなりません。
以上の点から、原則として、有形(有体物等として)、無形(知的財産権等として)のいずれかの形で、補助事業を実施した後に事業資産として残る形の経費として、補助対象経費を検討する必要があります。
特段の理由がない資産性のない経費や大半が1つの区分の経費は認められない
資産性のない経費のみを計上する事業や、1つの経費区分だけに大半の経費を計上する事業等については、特段の事由がある場合には、対象経費として認められる可能性があります。
その場合は、応募申請時に、その理由を明らかにした理由書を添付書類に追加して提出することにより、補助対象経費として認められる可能性もあります。
逆に言えば、特段の理由がない場合は、資産性のない経費のみを計上する事業や、1つの経費区分だけに大半の経費を計上する事業等については、補助事業や補助対象経費として認められません。
「明確な区分」「必要性・金額の妥当性・証拠書類」も重要
また、補助対象経費は、補助事業の対象経費として、他の事業と明確に区別できる経費である必要があります。
さらに、補助対象経費は必要性および金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できることも必要です。
このため、補助対象経費に関する契約を締結する場合は、見積書・発注書(注文書)・受注書(注文請書)、契約書等の書類において、補助事業の経費であることを明確にする必要がります。
同時に、その補助対象経費の必要性・金額の妥当性等を確認できる内容とする必要もあります。
原則として交付決定後の発注経費が対象、例外として令和3年(西暦2021年)2月15日以降に発生した経費も対象
なお、経費は、原則として、交付決定を受けた日付以降に発注(契約の申込み)したものが補助対象となります。
ただし、例外として、事務局から事前着手の承認を受けた場合には、令和3年(西暦2021年)2月15日以降に発生した経費も補助対象となります。この制度を事前着手承認制度(事前着手申請)といいます。
事前着手承認制度(事前着手申請)につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
事前着手承認制度とは、事務局から承認を受けることにより、交付決定前の発注(締結)された契約にもとづく経費であっても、補助対象経費として認定され得る制度のことです。事前着手申請は、この制度への申請のことです。
補助対象経費にならない経費
以下の経費は、補助対象になりません。
補助対象経費にならない経費
- 事務所等に係る家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
- フランチャイズ加盟料
- 電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯経費は除く)
- 商品券等の金券
- 販売する商品の原材料費、文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代、団体等の会費
- 飲食、娯楽、接待等の費用
- 不動産の購入費、株式の購入費、自動車等車両(事業所内や作業所内のみで走行し、自動車登録番号がなく、公道を自走することができないものを除く)の購入費・修理費・車検費用
- 税務申告、決算書作成等のために税理士、公認会計士等に支払う費用及び訴訟等のための弁護士費用
- 収入印紙
- 振込等手数料(代引手数料を含む)及び両替手数料
- 公租公課(消費税及び地方消費税額(以下「消費税等」という)等)
- 各種保険料
- 借入金などの支払利息及び遅延損害金
- 事業計画書・申請書・報告書等の事務局に提出する書類作成・提出に係る費用
- 汎用性があり、目的外使用になり得るもの(例えば、事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン及びデジタル複合機、家具等)の購入費
- 中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確でない中古品の購入費(3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得している場合等を除く)
- 事業に係る自社の人件費、旅費
- 再生エネルギーの発電を行うための発電設備及び当該設備と一体不可分の附属設備(太陽光発電を行うためのソーラーパネルなど)
- 上記のほか、公的な資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費
参照:事業再構築補助金公募要領
補助対象経費の相見積もりは原則として必要
すべての経費区分で可能な範囲で相見積りを取る
補助対象経費を支出する発注先(契約相手)の選定の際には、可能な範囲において相見積もりを取得する必要があります。また、その相見積りの結果、最低価格を提示した発注先(契約相手)を選定する必要があります。
なお、相見積りをおこなわない、または最低価格を提示していない発注者(契約相手)を選定することもできますが、その場合は、その理由と価格の妥当性を示す書類を整備する必要があります。この際、市場価格と乖離した価格の場合は、対象経費と認められない可能性もあります。
相見積り必須の経費区分とは
なお、一部の経費区分については、次のとおり相見積りが必須となります。
相見積もりが必要な補助対象経費 | |
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建物費 | 入札・相見積もりが必要。 |
機械装置・システム構築費 | 中古設備の場合は、3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりの取得が必要。 | 専門家経費 | 以下の内容に準じるか、または依頼内容に応じた価格の妥当性を証明する複数の見積書を取得することが必要(ただし、1日5万円(税別)が上限)。
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すべての補助対象経費 | 契約(発注)先1件あたりの見積額の合計が50万円(税抜き)以上になる場合は、原則として同一条件による相見積もりを取ることが必要。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
見積もりはなるべく事前に取得する
補助事業実施期間中にすべての手続を完了させなければならない
なお、補助対象経費の見積書は、事業再構築補助金の申請の際には添付する必要はありません。このため、見積もりは、必ずしも事前に取得する必要はありません。しかしながら、見積もりは、なるべく事前に取得しておくべきです。
というのも、次の通り、補助対象経費の支払いを含め、すべての手続きを補助事業実施期間に完了しなければなりません。
・以下の補助事業実施期間に、契約(発注)、納入、検収、支払及び補助事業実績報告書の提出等のすべての事業の手続きが完了することが必要となります。
➢ 通常枠、緊急事態宣言特別枠
→交付決定日から12か月以内(ただし、採択発表日から14か月後の日まで)。
➢ 卒業枠、グローバルV字回復枠
→交付決定日から14か月以内(ただし、採択発表日から16か月後の日まで)。参照:事業再構築補助金公募要領
市販品の購入のように、比較的短期間で手続きを終えられるものであれば、特に問題ないかもしれません。
しかし、システム開発のように、納入・検査まで時間がかかる補助事業の場合は、補助事業実施期間中にすべての手続きが完了しない可能性もあります。
特に、規模が大きい補助事業の場合は、見積もり・相見積もりを取得するだけでも、相応の時間がかかってしまい、補助事業への着手が遅くなることも考えられます。
このため、交付決定後にすぐに補助事業を実施できるよう、なるべく事前に見積もりを取っておくべきです。
事業計画で決めた補助対象経費は変更できない
また、交付決定後に発注先(契約相手)に見積もりの提示を依頼した場合、事業計画で策定した価格を上回る価格が提示される可能性もあります。
補助対象経費は、原則として、事業計画で策定した金額の範囲内でなければなりません。
このため、特に金額が大きな補助経費については、想定外の金額が提示されないように、申請の前の時点で、見積もり・相見積りを取得しておくべきです。