グローバル展開要件とは、事業再構築補助金の要件のひとつで、グローバル展開を果たす事業を実施することです。グローバル展開要件は、中小企業卒業枠の一部と中堅企業グローバルV字回復枠において求められます。

グローバル展開要件は4種類のグローバル展開を果たす事業を実施すること

グローバル展開要件とは、事業再構築補助金の要件のひとつで、以下の4種類のグローバル展開を果たす事業のうちのひとつを実施することです。

4種類のグローバル展開要件
  1. 海外直接投資
  2. 海外市場開拓
  3. インバウンド市場開拓
  4. 海外事業者との共同事業

以下、それぞれ詳しく解説します。

【グローバル展開要件1】海外直接投資

海外直接投資とは

【意味・定義】海外直接投資とは

海外直接投資とは、中小企業等が補助金額の二分の一以上を外国における支店その他の営業所又は海外子会社等(当該中小企業等の出資に係る外国法人等であって、その発行済株式の半数以上または出資価格の総額の二分の一以上を当該中小企業等が所有しているものをいう。)の事業活動に対する費用に充てることで、国内及び海外における事業を一体的に強化することをいう。

海外直接投資は、海外の事業所(支店・営業所・子会社等)の事業活動に対し、補助金を充てることです。

海外直接投資の要件

海外直接投資の要件は、以下のとおりです。

海外直接投資の要件
  1. 補助金額の1/2以上の補助金を海外の事業活動に使用すること。
  2. 支店、営業所、子会社等(申請者が出資する外国法人等であって、その発行済株式の半数以上又は出資価格の総額の1/2以上をその申請者が所有しているもの)の事業活動に1.の補助金を充てること。
  3. 国内および海外における事業を一体的に強化すること。

直接投資によるグローバル展開に活用できる

海外直接投資は、支店、営業所、子会社等への直接投資による海外へのグローバル展開に活用できる事業再構築補助金です。

補助金額のうち、50%以上の補助金を使う必要ありますので、支店、営業所、子会社等における事業再構築が、事業計画の中心となります。

なお、要件3.にもあるとおり、海外直接投資とはいえ、「国内および海外における事業を一体的に強化すること」が要件となります。

このため、単に海外直接投資だけの事業計画とするのではなく、(申請者(=国内の事業者)に補助金を使用するかどうかはともかく)国内の事業と海外の支店、営業所、子会社等の事業とが一体的に強化される事業計画を策定することが重要となります。

海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料が求められる

なお、海外直接投資で事業再構築補助金を申請する場合、応募申請時に、海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料の提出が求められます。

公募要領にはその詳細が記載されていませんが、おそらく日本語訳の添付が必要となると思われます。

また、財務諸表については、外国政府の税務当局の公印、または日本における公証役場に相当する公証人の認証等が必要となる可能性があります。

こうした翻訳や手続きが意外と時間がかかる可能性がありますので、海外直接投資による申請を検討する際には、事務局に確認のうえ、なるべく早めにこれらの対応をするべきです。

【グローバル展開要件2】海外市場開拓

海外市場開拓

【意味・定義】海外市場開拓とは

海外市場開拓とは、中小企業等が海外における需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業の海外売上高比率が二分の一以上となることが見込まれるものをいう。

海外市場開拓と、海外への新製品・新サービス(業態転換の場合は既存サービスを含む)の販売を目的とした需要開拓をすることです。

海外市場開拓の要件

海外市場開拓の要件は、以下のとおりです。

海外市場開拓の要件
  1. 海外における需要の開拓をおこなうこと。
  2. 事業計画期間終了までに本事業の海外売上高比率が1/2以上となることが見込まれること。

海外市場開拓は海外販路開拓に活用できる

海外市場開拓は、いわゆる「海外販路開拓」のことです。

特に販路開拓の方法そのものは限定されていませんので、インターネット通販等を含めて、様々な方法が考えられます。

また、要件2.にあるとおり、一種の売上高構成比要件(海外売上高比率1/2以上)がありますので、現在別の海外売上高がある事業者にとっては、ハードルが高いグローバル展開といえます。

逆に、現在海外売上高がない事業者にとっては、売上高比率の要件そのものは、クリアが容易といえます。ただし、海外市場開拓が未経験であるため、周到な事業計画を策定しなければ、不採択となる可能性があります。

海外市場調査報告書が求められる

なお、海外市場開拓で事業再構築補助金を申請する場合、応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書の提出が求められます。

この海外市場調査報告書の内容が海外売上高比率1/2以上の要件を達成できる裏付けとならない場合は、事業再構築補助金として採択されないものと思われます。

よって、事業計画の策定にあたっては、まずは需要を開拓する海外の市場調査を先行して実施し、海外売上高比率1/2以上の要件を達成できる見込みがあることを確認のうえ、事業計画を策定するべきです。

なお、インターネットでの通販の場合は、各種ウェブサービスを活用することにより、オンライン上のデータを入手しやすいため、比較的容易に海外市場調査報告書の作成ができます。

【グローバル展開要件3】インバウンド市場開拓

インバウンド市場開拓

【意味・定義】インバウンド市場開拓とは

インバウンド市場開拓とは、中小企業等が国内における外国人観光旅客の需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業に係る製品又は商品若しくはサービスの提供先の二分の一以上が外国人観光旅客の需要に係るものとなることが見込まれるものをいう。

インバウンド市場開拓は、外国人観光旅客に対する製品、商品、サービスの提供を目的とした需要開拓をすることです。

インバウンド市場開拓の要件

海外市場開拓の要件は、以下のとおりです。

インバウンド市場開拓
  1. 国内における外国人観光旅客の需要の開拓を行うこと。
  2. 事業計画期間終了までに本事業に係る製品または商品もしくはサービスの提供先の1/2以上が外国人観光旅客の需要に係るものとなることが見込まれること。

インバウンド市場開拓は主に国内観光事業者(旅行・宿泊・飲食・小売り)向け

インバウンド市場開拓は、外国人観光客向けの製品、商品、サービスの提供のことです。

特に公募要領で明記されちませんが、国内の観光事業者、特に旅行業者、観光地の宿泊業者、飲食店、土産店などの小売り業者等を想定しているものと思われます。

また、要件2.にあるとおり、一種の売上高構成比要件(外国人観光客向けの売上が1/2以上)がありますので、現在すでに外国人観光客向けの売上が発生している場合は、ハードルが高いグローバル展開といえます(ただし、売上高を計算する基準にもよります)。

逆に、現在外国人観光客への対応をしていない事業者にとっては、売上高比率の要件そのものは、クリアが容易といえます。ただし、インバウンド対応が未経験であるため、周到な事業計画を策定しなければ、不採択となる可能性があります。

インバウンド市場調査報告書が求められる

なお、インバウンド市場開拓で事業再構築補助金を申請する場合、応募申請時に、具体的な想定顧客が分かるインバウンド市場調査報告書の提出が求められます。

このインバウンド市場調査報告書の内容が外国人観光客向けの売上が1/2以上となる要件を達成できる裏付けとならない場合は、事業再構築補助金として採択されないものと思われます。

よって、事業計画の策定にあたっては、まずはこのインバウンド市場の調査を先行して実施し、外国人観光客向けの売上が1/2以上となる要件を達成できる見込みがあることを確認のうえ、事業計画を策定するべきです。

なお、新型コロナウイルスの発生以前のインバウンド市場の資料については官民とも充実していますが、新型コロナウイルスの発生後のインバウンド市場の資料については必ずしも充実しているとはいえません。

インバウンド市場調査報告書の作成にあたっては、この点に留意のうえ、調査と申請のタイミングを図ることも重要となります。

【グローバル展開要件4】海外事業者との共同事業

海外事業者との共同事業

【意味・定義】海外事業者との共同事業とは

海外事業者との共同事業とは、中小企業等が外国法人等と行う設備投資を伴う共同研究又は共同事業開発であって、その成果物の権利の全部又は一部が当該中小企業等に帰属するものをいう。

海外事業者との共同事業は、いわゆる共同研究開発・業務提携の実施のことです。

海外事業者との共同事業の要件

海外市場開拓の要件は、以下のとおりです。

海外事業者との共同事業
  1. 外国法人等とおこなう設備投資を伴う共同研究または共同事業開発=業務提携による事業を実施すること。
  2. 1.の結果、成果物の権利の全部または一部が申請者に帰属するものであること。

海外事業者との共同事業は共同研究・業務提携

海外事業者との共同事業は、いわゆる共同研究開発や業務提携のうち、成果物の権利(一般的には知的財産権)が発生するもののことです。

単なる共同研究開発・共同事業開発ではなく、要件1.にあるとおり、「設備投資を伴う」ことが要件となります。

このため、例えば基礎研究にとどまる程度の共同研究開発では、要件に適合しない可能性があります。

また、これ自体には売上高等の要件はないものの、事業再構築の種類により、いずれかの売上高に関する要件は求められます(売上高10%要件売上高構成比要件付加価値額要件)。

この点から、限られた期間内で売上の発生まで見据えた事業計画を策定する必要があります。

逆に言えば、長期間・大規模な共同研究が必要となる場合は、海外事業者との共同事業は活用しにくいといえます。

共同研究契約書・業務提携契約書が求められる

なお、海外事業者との共同事業で事業再構築補助金を申請する場合、応募申請時に、共同研究契約書または業務提携契約書(日本語訳。検討中の案を含む)の提出が求められます。

共同研究開発契約書と業務提携契約書は、いずれも非常に複雑で難易度が高い契約書です。特に前者の共同研究開発契約書は、事業上の契約書の中でも最も難易度が高い契約書のひとつです。

そのうえ、外国法人等との契約交渉も容易ではなく、また、仮に日本法ではなく外国法が準拠法となった場合は、さらに難易度が上がります。

こうした事情があるため、海外事業者との共同事業で事業再構築補助金を申請する場合は、事業計画の策定と並行して、なるべく早めに契約内容の検討と契約書の作成に着手するべきです。