最低賃金枠とは、通常枠以外の事業再構築補助金のひとつで、最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等(中小企業者等・中堅企業等の両者)の取組みを支援するものです。最低賃金枠は、要件を満たすことで、通常枠に補助金額が上乗せされる点が特徴です。
最低賃金枠は売上が特に減少した企業向けの事業再構築補助金
最低賃金枠は、特に売上が減少していて、かつ、従業員の賃金が最低賃金に近い企業向けの枠であり、通常枠の補助金に加えて、事業規模や従業員数に応じた補助金の上乗せがされるものです。
最低賃金枠は、要件さえ満たせば、中小企業者等・中堅企業等のいずれも申請できます。追加の補助金額は、最低でも100万円、最大で従業員の数に応じて、500万円(5人以下)、1,000万円(6~20人以下)、1,500万円(21人以上)となっています。
最低賃金枠の概要
最低賃金枠の概要 | |
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定義 | 該当なし(事業再構築指針(令和3年3月29日改訂版)には緊急事態宣言特別枠の記載はありません) |
概要 | 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等(中小企業者等・中堅企業等の両者)が取り組む事業再構築に対する支援。 |
補助対象事業者 | 中小企業者等・中堅企業等 |
要件 |
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補助金額 |
【従業員数5人以下】100万円~500万円 【従業員数6~20人】100万円~1,000万円 【従業員数21人以上】100万円~1,500万円 |
補助率 |
中小企業者等:3/4 中堅企業等:2/3 |
補助事業実施期間 | 交付決定日~12か月以内(ただし、採択発表日から14か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費 |
補助金返還の制度 | 公募要領では特に記載なし。ただし、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に違反した場合は、返還の可能性あり。 ※この他、不採択、交付取消、財産処分の場合の返還、収益納付等が発生する可能性あり。 |
備考1 | 最低賃金枠は、中小企業者等・中堅企業等のいずれであっても申請できます。 |
備考2 | 最低賃金枠で不採択の場合は、通常枠で再審査されます。再審査にあたっては事業者での手続きは不要です。 |
参照: 事業再構築補助金公募要領
最低賃金枠の要件
【要件1】事業再構築要件
事業再構築要件 |
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事業再構築補助金の通常枠(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換(製造業・サービス業)又は事業再編)のいずれかを行うものであること。 |
※ 当然ながら、上記の通常枠の事業再構築に求められる要件を別途満たす必要があります。
参照:事業再構築補助金の概要
【要件2】売上高(等)減少要件
売上高(等)減少要件 |
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2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること等。 (売上高に代えて付加価値額を用いることも可能) |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件3】最賃売上高(等)減少要件
最賃売上高(等)減少要件 |
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以下の(ア)又は(イ)のいずれかの要件を満たすこと。 (ア)2020年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること。 (イ)(ア)を満たさない場合には、2020年4月以降のいずれかの月の付加価値額が対前年又は前々年の同月比で45%以上減少していること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件4】最低賃金要件
最低賃金要件 |
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2020年10月から2021年6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件5】認定経営革新等支援機関要件
認定経営革新等支援機関要件 |
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事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。 補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)と策定していること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
【要件6】付加価値額要件
付加価値額要件 |
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補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。 |
参照:事業再構築補助金公募要領
最低賃金枠の特徴
【特徴1】最低賃金引上の原資の確保が難しい事業者向けの事業再構築の枠
最低賃金枠は、中小企業者・中堅企業等のいずれも申請できる枠であり、令和3年(2021年)の最低賃金の引上げにより、その原資の確保が難しい事業者に適用されます。
最低賃金枠は、通常枠の要件に加えて、通常枠の売上高(等)減少要件とは別計算の売上高の減少の要件を満たす必要があります(最賃売上高(等)減少要件)。
【意味・定義】最賃売上高(等)減少要件とは
最賃売上高(等)減少要件とは、以下の(ア)又は(イ)のいずれかの要件を満たすこと。
- (ア)2020年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること。
- (イ)(ア)を満たさない場合には、2020年4月以降のいずれかの月の付加価値額が対前年又は前々年の同月比で45%以上減少していること。
つまり、最低賃金枠で事業再構築補助金の申請をする場合は、通常枠で必要とされる10%の売上高(等)減少要件とは別に、上記の最賃売上高(等)減少要件を満たす必要があります。
なお、(イ)の要件の付加価値額は、いわゆる付加価値額要件における付加価値額と同じものです。
【特徴2】最低賃金枠は最も採択率が高い事業再構築補助金
最低賃金枠による申請は、事業再構築補助金の審査において加点要素となります。
しかも、緊急事態宣言特別枠よりも、採択率が優遇されます。
このため、最低賃金枠は、事業再構築補助金において、最も採択されやすい枠であると言えます。
不採用でも通常枠の事業再構築補助金として再審査される
なお、最低賃金枠は、不採択となった場合であっても、通常枠として再審査されます。
ただし、この場合、緊急事態宣言特別枠とは異なり、通常枠での再審査の際に採択率が高くなるかどうか、また、加点要素となるかどうかについては、不明です。
ポイント
- 最低賃金枠は、最低賃金の引上げにより、その原資の確保が困難な企業を支援するための事業再構築補助金。
- 最低賃金枠は、通常枠に加えて一定の要件を満たすことで、最大1,500万円の追加の補助金が給付される。
- 最低賃金枠は、中小企業者等・中堅企業等のいずれも申請できる。
- 最低賃金枠は、採択の審査において、緊急事態宣言特別枠よりも採択率で優遇される。
- 最低賃金枠は、不採択であっても通常枠として審査される。ただし、この場合に加点されるかどうかは不明。