中堅企業グローバルV字回復枠(グローバルV字回復枠)とは、通常枠以外の事業再構築補助金のひとつで、事業再構築により、中堅企業等が事業計画期間終了までにグローバル展開により事業の大幅な回復を目指すものです。グローバルV字回復枠は、中堅企業等限定の枠で、通常枠に比べて、補助金額が多い反面、目標が達成できなかった場合、返金を求められる点が特徴です。

中堅企業グローバルV字回復枠は通常枠+αの中堅企業等専用の事業再構築補助金

中堅企業グローバルV字回復枠は、文字どおり中堅企業等限定の「グローバルV字回復」の枠であり、中堅企業等が通常枠の事業再構築とグローバル展開によりV字回復をするためのものです。

中堅企業グローバルV字回復枠は、通常枠の事業再構築に加えて、後述のグローバル展開要件を満たす必要があります。また、通常枠とは異なり、付加価値額要件を満たさない場合は、補助金の返還を求められます。

他方で、これらの厳しい要件をクリアした場合は、通常枠の分に加えて、さらに最大で2,000万円の補助金が追加で給付されます。

中堅企業グローバルV字回復枠の概要

中堅企業グローバルV字回復枠(グローバルV字回復枠)の概要
定義 中堅企業グローバル V 字回復枠とは、新型コロナウイルス感染症によりその事業に大きな影響を受けているが、事業再構築により、事業計画期間終了までにグローバル展開により事業の大幅な回復を目指す中堅企業等を対象とした事業再構築補助金をいう。
概要 事業再構築を通じて、コロナの影響で大きく減少した売上をV字回復させる中堅企業等を支援。(すべての公募回の合計で、100社限定)
補助対象事業者 中堅企業等限定
要件
  1. 事業再構築要件
  2. 売上高減少要件(グローバルV字回復枠)
  3. 認定経営革新等支援機関要件
  4. グローバル展開要件
  5. 付加価値額要件(グローバルV字回復枠)
補助金額 8,000万円超~1億円
補助率 1/2
補助事業実施期間 交付決定日~14か月以内(ただし、採択発表日から16か月後の日まで)
補助対象経費 建物費機械装置・システム構築費(リース料を含む)技術導入費専門家経費運搬費クラウドサービス利用費外注費知的財産権等関連経費広告宣伝・販売促進費研修費海外旅費
補助金返還の制度
  1. 予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、事業計画期間終了時点において、付加価値額の年率平均の増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均の増加が 5.0%に達しなかった場合、通常枠の補助上限額との差額分について補助金を返還する必要があります。
  2. 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に違反した場合は、返還を求められる可能性があります。

※この他、不採択、交付取消、財産処分の場合の返還、収益納付等が発生する可能性があります。

備考1 グローバルV字回復枠は、中堅企業等限定の枠です。
備考2 グローバルV字回復枠で不採択の場合は、通常枠で再審査されます。再審査にあたっては事業者での手続きは不要です。

中小企業卒業枠の要件

【要件1】事業再構築要件

事業再構築要件
事業再構築補助金の通常枠(新分野展開事業転換業種転換、業態転換(製造業サービス業)又は事業再編)のいずれかを行うものであること。

※ 当然ながら、上記の通常枠の事業再構築に求められる要件を別途満たす必要があります。

【要件2】売上高減少要件(グローバルV字回復枠)

売上高減少要件
申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して15%以上減少していること。

【要件3】認定経営革新等支援機関要件

認定経営革新等支援機関要件
事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。
補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)と策定していること。

【要件4】グローバル展開要件

グローバル展開要件の概要
グローバル展開とは、次の(1)から(4)までのいずれかに該当する事業をいう。
(1)海外直接投資 海外直接投資とは、中小企業等が補助金額の二分の一以上を外国における支店その他の営業所又は海外子会社等(当該中小企業等の出資に係る外国法人等であって、その発行済株式の半数以上又は出資価格の総額の二分の一以上を当該中小企業等が所有しているものをいう。)の事業活動に対する費用に充てることで、国内及び海外における事業を一体的に強化することをいう。
(応募申請時に、海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料を提出すること。)
(2)海外市場開拓 海外市場開拓とは、中小企業等が海外における需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業の海外売上高比率が二分の一以上となることが見込まれるものをいう。
(応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書を提出すること。)
(3)インバウンド市場開拓 インバウンド市場開拓とは、中小企業等が国内における外国人観光旅客の需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業に係る製品又は商品若しくはサービスの提供先の二分の一以上が外国人観光旅客の需要に係るものとなることが見込まれるものをいう。
(応募申請時に、具体的な想定顧客が分かるインバウンド市場調査報告書を提出すること。)
(4)海外事業者との共同事業 海外事業者との共同事業とは、中小企業等が外国法人等と行う設備投資を伴う共同研究又は共同事業開発であって、その成果物の権利の全部又は一部が当該中小企業等に帰属するものをいう。
(応募申請時に、共同研究契約書又は業務提携契約書(日本語訳。検討中の案を含む)を追加すること。)

【要件5】付加価値額要件(グローバルV字回復枠)

付加価値額要件(グローバルV字回復枠)
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。

中堅企業グローバルV字回復枠(グローバルV字回復枠)の特徴

【特徴1】中堅企業等がグローバル展開により売上をV字回復させるための枠

中堅企業グローバルV字回復枠は、中堅企業等限定の枠であり、グローバル転換をすることにより、売上をV字回復させる枠です。

中堅企業グローバルV字回復枠では、通常枠の要件に加えて、グローバル展開を果たすための事業に取り組むことが必要となります(グローバル展開要件)。グローバル展開は、具体的には、次のいずれかに該当する事業のことです。

4つのグローバル展開
  • 海外直接投資
  • 海外市場開拓
  • インバウンド市場開拓
  • 海外事業者との共同事業

これら4つのグローバル展開については、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【特徴2】売上高(等)減少要件・付加価値額要件ともに他よりも厳しい

グローバルV字回復枠は、他の事業再構築に比べて、売上高(等)減少要件・付加価値額要件ともに、厳しい要件となっています。

売上高(等)減少要件については、他の事業再構築では10%となっているのに対し、グローバルV字回復枠では15%となっています。また、付加価値額要件については、他の事業再構築では3.0%となっているのに対し、グローバルV字回復枠では、5.0%となっています。

売上高(等)減少要件・付加価値額要件比較表
グローバルV字回復枠 その他の事業再構築
売上高(等)減少要件 ②2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して15%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること ②2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること等
付加価値額要件 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。


なお、グローバルV字回復枠以外の枠では、売上高(等)減少要件については売上高に代えて付加価値額を用いることが可能ですが、グローバルV字回復枠に限っては、付加価値額で代替することはできません。

【特徴3】不採択でも通常枠で再審査される

グローバルV字回復枠は、事業再構築要件として、通常枠の事業再構築補助金の要件を満たしている必要があります。

この点について、グローバルV字回復枠での事業再構築補助金の申請では、仮にグローバルV字回復枠として不採択となった場合であっても、通常枠で再審査されます。ただ、当然ながら、その補助金額・補助率は、通常枠の事業再構築補助金の範囲内となります。

なお、再審査の際には、改めて事業者が手続きをする必要はありません。

【特徴4】グローバルV字回復枠は目標未達で補助金の返還が求められる

中堅企業グローバルV字回復枠の補助金額は、8,000 万円超~1億円であり、通常枠(100万円~8,000万円)に加えて、従業員数に応じて、最大で6,000万円もの追加分があります。しかしながら、中堅企業グローバルV字回復枠は、通常枠とは異なり、補助金返還の制度があります。

グローバルV字回復枠については、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、事業計画期間終了時点において、付加価値額の年率平均の増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均の増加が5.0%に達しなかった場合、通常枠の補助上限額との差額分について補助金を返還する必要があります。

このように、目標(=付加価値額の増加)が達成できなかった場合は、補助金の返還を求められます。付加価値額の定義は、以下のとおりです。

【意味・定義】付加価値額とは

付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいう。

なお、返還を求められる金額については、補助金額の全額ではなく、あくまで「通常枠の補助上限額との差額分」に限ってはいます。つまり、最大で6,000万円の返還を求められる可能性があります。

逆に言えば、上記の付加価値額の要件(付加価値額要件)を満たすだけの営業利益を出し、従業員を雇用し、設備投資をすることを、2,000万円の上乗せ分の補助を含む予算で達成できるかどうか、という判断になります。

ポイント
  • 中堅企業グローバルV字回復枠は、中堅企業等がグローバル展開によるV字回復を支援するための事業再構築補助金。
  • 中堅企業グローバルV字回復枠は、通常枠に加えて一定の要件を満たすことで、最大2,000万円の追加の補助金が給付される。
  • 中堅企業グローバルV字回復枠は、中堅企業等限定の枠であり、中小企業者等による申請はできない。
  • 中堅企業グローバルV字回復枠では、グローバル展開要件として、海外直接投資、海外市場開拓、インバウンド市場開拓、海外事業者との共同事業のいずれかを満たす必要がある。
  • 中堅企業グローバルV字回復枠は、他の事業再構築と比べて、売上高(等)減少要件と付加価値額要件の両者がより厳しい要件となっている。
  • 中堅企業グローバルV字回復枠では、目標(付加価値額5%の増加)が達成できない場合は、補助金の返還を求められる。