事業再構築補助金における「みなし大企業」とは、中小企業者等のうち、一定の要件を満たすことにより大企業として扱われる者のことです。主に、株主・出資者が大企業の場合や、役職員が大企業の役職員を兼任・兼務している場合などが該当します。

みなし大企業とは

みなし大企業=大企業扱いの中小企業者等

事業再構築補助金における「みなし大企業」とは、中小企業者等であるにもかかわらず、中小企業者等ではなく、大企業として扱われる事業者のことです。具体的には、以下のいずれかの中小企業者等が該当します。

中小企業者の例外となる「みなし大企業」
  1. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者
  2. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者
  3. 大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者
  4. 発行済株式の総数又は出資価格の総額を上記1.~3.に該当する中小企業者が所有している中小企業者
  5. 上記1.~3.に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者

※ 上記の役員には、社外取締役と監査役は含みません。

【定義・要件】中小企業者等とは?

中小企業者とは、それぞれの業種ごとに、それぞれの資本金または常勤の従業員数のどちらか一方(個人事業者の場合は常勤従業員数のみが下記の表の数字以下となる会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社)または個人事業者のことです。

中小企業者
業種 資本金
(※1)
常勤従業員数
(※2)
製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円 900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種(上記以外) 3億円 300人

※1 資本金とは、資本の額または出資の総額をいいます。なお、個人事業者は、資本金については判定せず、常勤従業員の人数だけで判定します。
※2 常勤従業員とは、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」(常時使用する従業員・常勤従業員とは?)をいいます。
※3 資本金および常勤の従業員数の両方(個人事業者の場合は常勤従業員数のみが上記の表の数字を超える場合、大企業に該当します。


いわゆる会社組織の事業者や個人事業者は、この中小企業者に該当するかどうかの判断となります。

中小企業者等に該当する場合であっても、すでに述べた5つのいずれかの要件に該当した場合は、みなし大企業に該当します。

なお、より正確な中小企業者等の定義につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

中堅企業がみなし大企業に該当するのか?

みなし大企業の定義の1.~5.の文末は「中小企業者」となっていますので、すでに述べたとおり、中小企業者がこの定義に該当する場合は、みなし大企業となります。

では、同様に中堅企業が1.~5.の定義に該当する場合は、みなし大企業に該当するのかどうかが問題となります。

この点につき、弊所で事業再構築補助金の事務局に確認したところ(2021年6月17日12:00現在)、中堅企業もみなし大企業に該当し得る、とのことでした。

従いまして、中堅企業として事業再構築補助金の申請をする際には、みなし大企業に該当しないよう、注意が必要です。

みなし大企業は補助対象外

みなし大企業となる中小企業者は、事業再構築補助金の補助対象者とはなりません(ただし、「みなし中堅企業」の場合は、中堅企業扱いとなります)。

【注1】 大企業の子会社等の、いわゆる「みなし大企業」は支援の対象外です。

みなし大企業の具体例

みなし大企業の5つの要件

再度の確認となりますが、みなし大企業は、以下の5つのいずれかの要件を満たした会社組織、個人事業者が該当します。

中小企業者の例外となる「みなし大企業」
  1. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者
  2. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者
  3. 大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者
  4. 発行済株式の総数又は出資価格の総額を上記1.~3.に該当する中小企業者が所有している中小企業者
  5. 上記1.~3.に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者

※ 上記の役員には、社外取締役と監査役は含みません。

以下、それぞれ具体例を見ていきましょう。

【具体例1】大企業の子会社・出資先

みなし大企業の要件1

発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者

これは、いわゆる「大企業の子会社」などの出資先である会社が該当します。

注意するべき点は、発行済株式の総数又は出資価格の総額の過半数ではなく2分の1以上である、という点です。

【具体例2】大企業の合弁会社

みなし大企業の要件2

発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者

これは、いわゆる「大企業の合弁会社」などの複数の大企業の出資先である会社が該当します。

【具体例3】大企業の役職員が運営する会社

みなし大企業の要件3

大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者

これは、兼業・副業をする大企業の役職員が、役員総数の2分の1を兼務する会社が該当します。

このため、この要件に該当するかどうかは、役員が大企業の役職員を兼任しているかどうかが重要となります。役員の中に専任者ではなく兼任者がいる場合は、その就任先・勤務先についても、よく確認しておきましょう。

【具体例4】大企業の子会社・合弁会社・役職員の運営する会社が出資する会社

みなし大企業の要件4

発行済株式の総数又は出資価格の総額を上記1.~3.に該当する中小企業者が所有している中小企業者

これは、大企業の子会社・合弁会社などの出資先の会社や、大企業の役職員を兼任・兼務する役員が役員総数の2分の1以上の会社が、総額=100%出資する会社です。大企業の孫会社、大企業の子会社の合弁会社などが該当します。

総数=100%出資の会社ですので、よほどの偶然がない限りは、結果として「たまたま」該当するケースは少ないと思われます。

【具体例5】役員全員が大企業の子会社・合弁会社・役職員を兼任する役員の運営する会社の役職員を兼任する会社

みなし大企業の要件5

上記1.~3.に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者

これは、役員の全員が、以下のいずれかの会社の役職員を兼務する会社が該当します。

  • 【要件1】大企業の子会社等の会社
  • 【要件2】大企業の合弁会社などの出資先等の会社
  • 【要件3】大企業の役職員を兼任・兼務する役員が役員総数の2分の1以上の会社

「役員総数の全てを占めている」ですので、複数の役員がいる場合は、それぞれ上記に該当する会社の役職員を兼任・兼務していないかどうか、よく確認してください。

後から「みなし大企業」が発覚した場合は補助金返還となり得る

すでに述べたとおり、みなし大企業は、事業再構築補助金の補助対象外です。このため、そもそも事業再構築補助金の申請はできません。

ただ、「うっかり」みなし大企業であることを知らずに申請することもあり得るでしょう。この場合、後でみなし大企業であることが発覚したときは、補助金交付の決定を受けたとしても、その補助金交付の決定が取消となり、補助金の返還を求められることとなります(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第17条、第18条等)。

このため、事業再構築補助金の申請にあたっては、株主・出資者・役員について、よく確認してください。